イエローナイフは朝

それが人生

宇多田ヒカルがまたよく分からないことを言ってる

自分が知らないうちに宇多田ヒカルが二曲も新曲を出していた。最近がっつりネットサーフィンもしないからこんなビッグニュースを見逃していたことにショックを受けた。それはそれとして、宇多田が精力的に活動しているようで本当に嬉しい。

一曲目は、「大空で抱きしめて」。

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サントリー天然水のCM曲らしい。マジかよ……道と同じじゃん……CMとかやってたの宇多田……テレビ付けないから知らないんだよ……勘弁して……

ポップ調だけど穏やかな曲で、自然の中をバックパック姿で歩く宇多田がすごくマッチしてる。サントリー天然水最高じゃん。一生サントリー天然水買います。

歌詞は、少し夢見がちな女の子が好きな人へ思いを馳せているような内容。可愛い。明るくテンポよく進んでいくけど、時々寂しさを感じさせる。 恋に夢中な女の子が喋っているような歌詞だけど、メロディは大人を感じさせる。好き。

 

もう一曲は、「Forevermore」。

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ていうか宇多田、ドラマの主題歌とか歌ってたの……マジで聞いてない……毎週宇多田の曲がOPで聴けるならそのドラマ見てたよ……早く言ってよ……視聴率どれぐらいだったか知らないけど宇多田が主題歌だから視聴率50%は固かったんじゃないですかね。見てないけど。

MVは、宇多田がたった一人で踊り続けている、というもの。Forevermoreの歌詞を体全体で表現している。途中で部屋の中心にあるステージに上がり、狭い円の上で激しく体をうねらせて、寝転んで、感情を爆発させている。青い照明に照らされて、宇多田の肌が陶器のような色に見えて、人間味を失って一種の芸術のように見える。

ていうか宇多田マジですごいな、黒のタンクトップとダンサーみたいな黒パンツで、よくわかんない円柱みたいなとこで踊ってるだけでハチャメチャ格好良い。すごすぎる。今何歳?え?34歳?むしろ若返ってない?

曲調は、先程の「大空で抱きしめて」とは違って、シックでシリアスな雰囲気。ヴァイオリンの前奏から入って、後ろで控えめなドラムが鳴るだけで、全体的に宇多田の声を引き立たせるためだけに演奏が存在している感じ。最近の宇多田は歌を大事にしていて、演奏は控えめというものが多いように感じるけど、これもそんな感じに聞こえる。(※全てド素人の感想です)

歌詞も本当に良いことを言っていて、特に「一人きりが似合う私を今日も会えず泣かせるのはあなただけよ」とかはすごく素敵だった。分かる分かる、そう思う相手っているよね、と思わず共感してしまった。その相手は結局サイコパスで倫理観に欠けていたのでズタボロにされて終わったんだけど。

でも、一節だけ、理解できない歌詞の部分があった。

 

友達は入れ替わり服は流行り廃る

私を私たらしめるのは

染み付いた価値観や

身に付いた趣味嗜好なんかじゃないと

教えてくれた

え、自分を自分たらしめるものって、価値観とか趣味嗜好じゃないの?

ここは聴いていて、ん?と考えた。どうやら宇多田は、人生の中で自分たらしめるものが他にあるということを見つけたらしい。私はまだ見つけられていないようで、この部分を今すぐ理解することは出来なかった。

私は今まで、自分の価値観というものを大事にしてきたし、多趣味であるが故に色々なものを吸収し、それが性格、生き方に反映されているのだと思っていた。そして、それらによって人格は形成されていくものだと思っていた。

でも宇多田ヒカルは自分たらしめるものは他にある、と言っている。他とは何なんだろう。今までの過去?自分でも意識していない部分での自分らしさ?それとも、他人から見た「私」が私だ、ということなんだろうか。深すぎる。分からない。

思えば、宇多田ヒカルの曲を聴いて、すぐに理解出来ない歌詞は山ほどあった。

「Stay Gold」の「就職も決まって遊んでばかりいらんないね 大人の常識や知恵身に付けるのも良い」なんて、自分がその歳になるまで実感が湧かなかったし、「For You」の「誰かの為にじゃなく自分の為にだけ優しくなれたらいいのに」とかは、人間関係に疲れた時に聴いたらはっとさせられた。「嵐の女神」は言わずもがなで、母と過ごした時間が頭に広がって、涙なしでは聞くことが出来ない。

もしかしたら、また私が年を取って、何かを経験した時にForevermoreを聴いたら、その時初めてこの歌詞の意味が分かるのかもしれない。他の人がこの歌詞を聴いて、「すごくわかる」と思う人も沢山いるのかもしれない。

宇多田は、いつも自分のずっとずっと先を歩いていて、何年も経った後にその意味を教えてくれる。だから宇多田ヒカルが好きだし、自分にとってただのアーティストじゃない。人生の先輩のような、恩師のような、そんな存在だ。